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松本 陽子 教授

松本 陽子 教授

脂質膜で副作用のないがん治療薬をめざして

Matsumoto Lab 2014_01.jpg 崇城大学生物生命学部応用生命科学科の松本陽子教授の研究チームは、「カチオン脂質膜」を開発し、難治性がんである腎臓がんに副作用なく治療効果を示すことを発見しました。成果は、日本がん学会で公表され、欧州のがん論文誌に掲載されました。

 通常の抗がん剤は、正常な細胞とがん細胞の区別が出来ないため、治療効果以外の副作用が大きな問題となっています。近年は分子標的治療薬によって効果の増大がみられますが、やはり副作用が避けられません。

 松本教授の研究チームが開発した「カチオン脂質膜」は、陽イオンでプラスに帯電するのに対し、がん細胞膜は陰イオンでマイナスに帯電しており、互いに引き合い、融合し易くなったと考えられます。実際、蛍光物質を含有させたカチオン脂質膜をがん細胞へ添加したところ、融合による蛍光が観察されました。その後、タンパク分解酵素やDNA断片化酵素が活性化され、がん細胞はバラバラに分断され、自然死と同様の細胞死(アポトーシス)が起きました。

 ヒトの腎臓がん細胞をマウスに移植してがんモデルマウスを作成し、カチオン脂質膜を注射すると、注射しなかったマウスに比べて延命しました。脂質膜は直径100ナノメートル(1万分の1ミリメートル)以上になると、生体に静脈注射された時に細網内皮系に取り込まれてしまいますが、新たに開発されたカチオン脂質膜は100ナノメートル以下の大きさを長期間保つことが可能です。そのため、正常なマウスにカチオン脂質膜を長期間投与後に、解剖、採血して臓器剖検、血液検査・生化学検査を行ったところ、全く異常は見られませんでした。

 遺伝子治療では、がん細胞へ遺伝子を運ぶベクターにウイルスを使うため安全性が懸念されていました。このため松本教授はカチオン脂質膜をベクターに用いることを考えて2006年に研究に着手しました。しかし、カチオン脂質膜だけでがん治療効果が得られることを見出しました。

 腎臓がんだけでなく、大腸がんでも同様にアポトーシスによるカチオン脂質膜の治療効果が得られています。大腸がんは転移し易いがんですが、がん転移モデルマウスを用いた治療実験から、カチオン脂質膜が転移を抑制することもわかりました。

 松本教授は、最近、トレハロースミセルを素材に用いた脂質膜も新たに開発し、正常細胞に影響なく肝臓がん細胞の増殖を抑制することも見出しています。この成果は欧州のがん論文誌に掲載されました。「トレハロースは保水力があり、がん細胞膜周囲の水構造との関連について詳しく調べたい」と松本教授は話しています。

 患者さんのQOL(quality of life、生活の質)を考えると、副作用なく治療効果がある薬剤が望まれます。松本教授の研究チームが解明した脂質膜のがん治療効果は、がん細胞膜をターゲットにアポトーシスを起こしており、副作用のない新たな治療戦略として大いに期待されています。




   新聞の掲載記事をPDF形式でご覧いただけます。

 松本教授(崇城大)に女性賞  【掲載年月日:2013年4月10日(483KB)】

   ※熊本日日新聞社提供

 

 

松本 陽子 教授
崇城大学生物生命学部応用生命科学科
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